目次

スポンサーサイト

増えた脂肪肝

増えた脂肪肝2006年の夏、「日本沈没」という映画が再登場し、好評を博しました。この映画は、「地殻変動で、2年以内に陸地のほとんどが海面下に沈降する」という地球物理学者の説を裏づけるような巨大地震が各地で相次ぎ、日本列島が沈没する前に日本国民と資産を海外に脱出させる計画を描いたものです。


東海大学医学部の松崎松平教授は以前、大胆にも「(肝臓に脂肪がつきすぎた状態の)脂肪肝が日本を滅ぼす」と題した論文を発表されました。私も同感の意を持ったものです。

ページのトップへ

メタボ

私は今「メタボリックシンドローム(以下、メタボと表記)は日本を滅ぼす」という表現が当たってしまうような危機感を抱いています。日本人の食生活は大きく変化しました。たとえばコンビニエンストアやファーストフード店が急速に普及したこと、日常の食事が不規則になったこと、魚介類を食べる機会が減少したこと、缶コーヒーや果物ジュースを飲みすぎることなどが挙げられます。かつて、大人がかかるから「成人病」と表現したものが、年齢ではなく生活習慣によってかかるという意味の「生活習慣病」に、さらに内臓脂肪が原因との意味で「メタボ」と呼び方が変わりました。

ページのトップへ

脂肪肝

年代や性別にかかわらず、小さい子どもでもかかる可能性があるのです。子どものころからメタボにかかっていては、前途多難と言わざるを得ません。20年ほど前から脂肪肝の患者さんが増え始めました。脂肪肝とは、肝臓の中性脂肪が30%以上になっている状態を言います。


健康な人の肝臓の中性脂肪は3~5%しかなく、それにくらべると、脂肪肝は「人間のフォアグラ」状態と言えます。最近、脂肪肝の弊害がようやく認識されつつありますが、当時は医者の誰一人として、病気であるとは捉えていませんでした。

ページのトップへ

脂肪肝の診断

脂肪肝の診断脂肪肝の診断は、腹部超音波検査で行うのが一般的です。脂を超音波に当てると白く光るように見えるので「ブライト・レバー」(輝ける肝臓)と表現され、比較的簡単に見分けることができるのです。超音波検査が導入されたのが20年ほど前で、その後は一般の健康診断にも導入されました。脂肪肝と診断される機会が増えた理由のひとつと考えられます。


ちょうど私が、東京女子医科大学消化器病センターから、同大学で唯一、定期的に健康診断(人間ドック)も行っている成人医学センターに異動した時期と一致します。

ページのトップへ

原因不明の脂肪肝

興味あることに、脂肪肝の患者さんは概して総コレステロール値は高くなく、いわゆる善玉コレステロールと表現されるHDL-コレステロール値が低いことに気がつきました。医師が学ぶ当時の教科書には、脂肪肝の検査値の特徴として「コリンエステラーゼ(肝機能、脂肪肝などの指標。数値が高くなると糖尿病、肥満などの疑いがある)が高値になる」との記載はありましたが、HDL-コレステロール値が低くなることには触れていませんでした。


私は、脂肪肝の実態を検討することから始めました。1987年のことです。東京女子医科大学附属成人医学センターの定期診断を受けた約6000人の実態調査をしたところ、なんと21・5%もの方が脂肪肝にかかっていたのです。予想を上回る割合の多さには驚いたものです。当時、脂肪肝は、肥満によるもの、糖尿病によるもの、アルコールの飲みすぎによるものが3大原因とされ、得に肥満によるものが多いとされていました。ところが当センターで調べたところ、肥満によるものは少なく、原因が分からない脂肪肝が多く存在するという結果を得て、「原因不明の脂肪肝」と表現しました。

ページのトップへ

コレステロール

metabo46.jpg多くの患者さんや定期診断の受信者の方々を拝見していて、私は「いわゆる悪玉コレステロールであるLDL-コレステロール値が単独で高いからといって、すぐさま動脈硬化には結びつかないのではないか」と、密かに考えていました。


折しも、コレステロールをすべての病気の原因とするような風潮のもと、コレステロール値を低下させるスタチンという薬剤が華々しく登場した時代と重なります。コレステロール値さえ大幅に低下させれば、心筋梗塞や脳梗塞を防ぐことができると考えられていたのです。

ページのトップへ

スポンサーサイト